赤目養生所
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赤目養生所とは

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所長のエッセイ集
赤目養生所
留守録・FAX 0595(64)1485
電子メール tanaka@yojo.org
27歳 男性 アトピー性皮膚炎

2006年夏。見えない力に導かれ、養生所に入院した。

昨年の6月頃からアトピーがひどくなり全身を痒みが襲ってきた。
とことん痒いところを掻き毟って、表皮は剥がれ、痒みが痛みに変わるまで、掻いていた。
全身は絶えずリンパ液が溢れ出て、肌着は見る見るうちにリンパ液を吸い込み黄色く変色した。日に何度も肌着を換えた。
部屋には自ら掻き毟った皮膚の表皮がクロワッサンの食べ滓のように無数に落ちている。
生まれつき肌が弱い私は小さい頃からアトピーの症状が少なからずあったものの、これほどの症状に苛まれることはこれまでなかった。

「何故、このような病になったのか?!」
それは自らの省みる事のない生活習慣だ。
夜は仕事が終わるまで、朝までかかっても寝ない。
食生活はコンビニ大好き。
タバコも缶コーヒーもこよなく愛した。
このことを今改めて振り返ると、人間の本来の生活にすべて逆のことをしていた。
そう。このような不規則、不摂生、運動不足など様々なマイナス要因が蓄積された故の病であろう。
体が悲鳴を上げるまで、体の異変に気づかなかった。気づけなかった。
養生所入所前にこれまでの環境を変えるため、養生所近くの、母の妹であるおばさんの家でお世話になりながら、診療所へ通院していた。
養生所の存在を知りはしていたが、未知の世界のような域へ一歩踏み入る勇気がなかった。が、導かれるように気が付けば養生所のベッドの上に横たわっている自分が居た。
今思えば養生所の生活は私にとってとても新鮮でやはり未知の世界であった。
医師とこんなに真剣に向き合えたのも初めてである。
いや、これほど真剣に向き合える医師に出会えたことが何より嬉しかった。
そして、病は違えど、患者同士が互いに労わりあい、互いに励まし、互いに心で接する事のできる場所であったような気がする。
生活のリズムも良く、食べるものは取れたての旬の野菜をメインとした贅沢な食事、夜までの空き時間は有意義な講座が開かれ体も心も潤いを感じられる日々。
明らかにこれまでの自らの生活と真逆の生活であることは一目瞭然であった。
私にとって養生所の生活を通して体得したものはかけがえのない経験であり、この場ではとてもとてもすべて表現することは困難である。

入院後、養生、日に2回の入浴と並行し、漢方薬の内服、抗ヒスタミン剤軟膏の塗布を行った。
赤くただれていた皮膚が、毎日少しずつ、健康的な皮膚に生まれ変わっていくのが、わかった。

私が養生所で学んだ一番大切なことを綴ります。
それは「咀嚼」(そしゃく)(食べ物をよく噛む)ということです。
人間は生きるために生きたものを狩猟、収穫し、それらの命を自らの体内に取り込み血肉化します。よく噛むということはそれらの命をより多く体内に取り込むことに繋がり、強い命を育むことに繋がります。
食べる前に「頂きます」と私たちが日々口にしている言葉は略語であり、本来は「あなたの命を私の命に変えさせて頂きます」という言葉です。
でも、現代においては、何でもかんでも食べればいいのではなく、よりその本質を得た栄養価の高い品質の食べ物、つまり農薬や化学物質により汚染され、生命力を奪われ、人工的に見せ掛けだけの糧を選択してはいけないということです。
これは私が人体に対するマイナスの食品を食べ続けた食の経験から言えることです。
このご時世に奇麗事かもしれませんが、奇麗事を私たちから奪ってしまった現代の食文化に人類の未来は殺伐としているような疑念をいだく次第です。でも、奇麗事では片付けてしまうことは容易ですが、すべて今日の食べ物を最高の品質に上げることは難しいかもしれませんが、
少なからず、自ら意識し、良いものを選択することは可能であり、無理なことではないはずです。
贅沢な食事とはなんだろう?養生所に入所なされた方ならすぐに回答していただけるかと思います。
が、時に言葉とは経験に勝ることはできません。
これまでお話してきましたが、是非、養生所で自らの生命力を感じ、自然の息吹を感じ、自然の恵みの瑞々しい食べ物を感じ、人間の体の神秘を体感していただきたいものです。

今、私は最高に元気です。全身の皮膚には、アトピーの影はもはや全く見られません。
病が私に与えてくれたかけがえのない日々を清清しい秋空に投影しております。
藤岡先生、田中先生、そしてスタッフの方々、共に過ごした養生所の患者さんたち、家族、おばさん、私の家族に心より感謝の気持を込めて。
「ありがとうございました。」


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