適量をおいしく食べて、毎日歩きましょう。ストレスはためないで。
肥満は万病の元、とよくいわれます。寿命を全うできずに死に至る病気の中で、肥満と深い関係のあるものは、脳卒中や心筋梗塞などのいわゆる心血管疾患や、大腸がんなど、現代の日本の死因の多くを占めます。
肥満の患者さんは、一部の代謝性、内分泌疾患や、薬の副作用のある方を除き、日常生活において、使うエネルギーと、摂取するエネルギーのバランスが崩れている場合が多いのです。すなわち、相対的に食べすぎか、運動不足なのです。検診などで「ひっかかる」高脂血症や肝機能障害、高尿酸血症(痛風)の方の多くにも、同じことが言えます。
もちろん、食べすぎといっても、高脂肪・高カロリーなど、内容に問題がある場合や、内容がよくても絶対量が多すぎる場合などいろいろです。また、食べ過ぎの原因が、忙しすぎる、常に我慢を強いられるなど、ストレスにある場合は、その解決も必要です。ストレスが多いと、血糖値やコレステロール値が高止まりする、という側面もあります。
ほかの多くの病気と同様、肥満や高脂血症などにも、遺伝性のものもありますが、患者さんは多くありません。「親も太っているから、努力しても無駄」という考えも、必ずしも正しくありません。
食事の内容ももちろんですが、とり方は、非常に大切です。よく噛んで、ゆっくり、よく味わって食べる。空腹を自覚してから、食べる。腹八分目にしておく。これらのことが、忙しい現代生活では、なおざりにされています。「ゆっくりと、よく味わ」わない「グルメブーム」とは、いったい何でしょうか。毎回の食事の質を高め、本当のグルメを目指したいものです。
運動不足は、現代日本人の多くに見られる現象です。車と交通機関の発達により、ほとんど歩かなくてもよくなりましたし、作業も機械化され、筋力を使う機会は激減しています。ドア・トゥ・ドアの車社会である田舎のほうが、都会に住むよりも運動不足になりやすい、といったことさえいわれています。
運動不足と言うよりも、「歩行不足」といったほうが実情に合っているかもしれません。
これらの疾患に対しては、当然、食事療法と運動療法が主になります。しかし、お一人お一人の生活様式は異なりますし、健康雑誌などのメディアで、実にさまざまな説が繰りひろげられているのも、私たちの頭を混乱させます。
「食事療法とは、具体的にはどうするのか」、「なぜいろいろトライしてみても、やせないのか」、「運動は、どのくらい、どんな運動をすればいいのか」などの疑問を踏まえ、あなたに合った効果的な養生法を、学習して正しい生理学的知識を取り入れ、ある程度の期間実践してみることで、身につけてください。
当所では、以上のことや、医師・管理栄養士との個別相談を踏まえ、お一人お一人に応じ、退院後の生活まで見据えた方針を決めて養生していただきます。程度によりますが、血中脂肪や尿酸値を下げるためのお薬は、体重、血液検査などをみながら、減量、中止の方向で進めます。
平成16年度の全入院患者さん50名(がん患者さん、極端な痩せ型の患者さんをのぞく)のうち、45人の方に、2kgから16kgの体重減少が見られました。 |