あなたにとって、本当に大切な事は?
近年、環境と健康との関連が話題になっています。心身にかかる過剰なストレスが、多種多様な病気を引き起こす事が分かってきたからです。
現代の私たちの生活は、不自然なものに囲まれています。昼夜がない、頭ばかり使って体を動かさない、食材に季節が感じられない・・・。本来動物である私たちの体が、悲鳴を上げているのです。
ここに挙げた疾患は、そんな不自然な生活環境と、ギクシャクした人間関係、価値観の揺らぎがおこすストレスが最大の原因といえるものです。気を使う時に起こる胃の痛みや下痢は、消化器の病気でしょうか。頻繁に起こる頭痛やめまいは、脳や耳の検査を受けて異常がなければ、放っておいて良いものでしょうか。悩みが多くて寝つけない場合の睡眠導入剤は、根本的な治療法でしょうか。
ストレスを無くし、心のバランスを保つ事は、とても大切な養生のひとつです。
なぜ、ストレスが体に悪いのでしょう。私達の体は、自律神経と呼ばれる、意識しないでも勝手に働いてくれる神経の働きによって、動物として生きられるようになっています。心臓が動き、呼吸をし、胃腸が働く、といったことです。自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類からなっていています。交感神経は、緊張したり、ストレスがかかった状態で働きが増し、副交感神経は、リラックスしている時に働きが増します。この2種類の神経の働きにより、私達の体は調節されています。すなわち、緊張とリラックスのバランスをとる事、切り替えをする事が、とても大切なのです。
心のバランスがくずれやすいのは、ストレスがかかり、緊張状態が長く続いた時です。肉体的なストレスは、「時間に追われ、食事もそこそこに働き、充分な睡眠もとれない」などといった事で起こります。精神的なストレスは、「いつも誰かの目が気になっている」「お金、仕事、家族のことなど、解決しない悩みがある」「自分が頑張らないといけない」「自分では、何がしたいのかわからない」、などと考えてしまいがちの方に大きいようです。つまり現代では、日本人に多いとされる生真面目な方ほど、病気になりやすいのです。これは、交感神経の働きが勝ちすぎて、心身のバランスが悪くなるからです。
このストレスを打ち消すために、食べる量や煙草の本数が増えたり、甘いものがむやみに欲しくなったりします。これらは、体がリラックスを求めている証なのです。
しかしこのような事が習慣になってしまうと、心の不調だけでなく、食べ過ぎや煙草の害、つまり糖尿病や、心筋梗塞や脳卒中につながる動脈硬化などの生活習慣病に陥ってしまいます。
どうすれば「精神的なストレスに強くなる」ことができるでしょうか。周りに左右されない、自分らしい生き方を保つ事、困難な状況にあっても、「自分がストレスを感じない」心をもつことが大切です。
とはいえ、辛い状況にあっては、楽観的な気分になる事はそう簡単ではありませんよね。状況をいきなりを変えることは難しいから、私たちの考え方を、少し変えてみましょう。
私たちの生きる目的のひとつに、「自分自身が、幸せを実感する」ことがあると思います。何を幸せと感じるかは、人それぞれです。だから、まずありのままの自分を肯定し、そして自分が何を大切に思っているか、他のものを得られなくても、これだけは持ちつづけたいことは何か、を意識する事が必要なのです。自分自身の優先順位をつける事です。
頭の中で考えていても悩みが解決しない時、緑の中を散歩する事は、気分転換をし、考え方の袋小路から抜け出すのに有効です。ヨーガは、張り詰めた心と身体を解きほぐしてくれる上、毎日の生活で、いかに「柔軟性がなくなっていたか」ということに気付かせてくれます。陶芸や版画、農作業で、一心に何かにうちこむ時間を過ごす事で、自分一人の時間の充実感を体験してください。早寝早起きの習慣も、心身のバランスを取戻すのに、とても有効です。よさそうな事は、結果を心配せず、まずやってみる、という姿勢が大切です。養生には、副作用はありません。
これらの病気で当所に来られた方の多くが、長年の問題点を解決したり、また糸口を見つけられ、抗不安薬や、睡眠導入剤を驚くほど減らして、希望を持って退院されます。入院前、1日40錠近い様々なお薬を飲んでおられ、退院時は3種類6錠・包まで減らせた方もいらっしゃいます。
じっくり話し合いながら、問題を解決していきましょう。 |